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dai さんの日記

 
2021
10月 2
(土)
11:35
トップの本棚―SF=スコシ・フシギ
本文


『ゴルゴ13』さいとう・たかをさん死去、84歳。どうぞご冥福を。


奇しくも、最近よく聞いていた音楽のなかに、次の1曲があった。

「夢のひとつ」 GARNET CROW(注1)


ふと、サビ前のフレーズを口ずさんでいた。

~なくして気づいてまた淋しがる
 身勝手な心に
 痛みは何度越えても
 想像した程強くなれないけど~


積読していた1冊の物語が、なぜかシンクロした。


『凍りのクジラ』  辻村深月  講談社文庫


このブログで『ぼくのメジャースプーン』(辻村深月)について書いたのはもう2年前のこと(「The lion-or-egg situation」2019年10月23日)で、そこでは大長編ドラえもん『のび太の魔界大冒険』でののび太と出木杉君の会話について触れていた。
科学と魔法は根が一つだったが魔法は悪魔の力を借りる、つまり神に背く学問だということで衰退したのだと。


理帆子は高校2年生。子供の頃に写真家であった父が失踪し、母と二人暮らし。その母も余命いくばくもない病で入院していて、彼女はお見舞いに通うため学校への通学定期とは別に、病院の最寄り駅までの定期券を持っている。

父はドラえもんが好きで、藤子・F・不二雄先生を尊敬していた。娘の理帆子もまたドラえもんが大好きである。藤子先生の次の言葉が物語のキーワードになる。

〈ぼくにとっての「SF」とはサイエンス・フィクションではなくて、「少し不思議な物語」のSF(すこし・ふしぎ)なのです〉

そこに焦点を当てるとなんだか家族の絆を描くハートウォーミングなストーリー展開を期待させてしまうが、道中は全く違う。
のっけから理帆子の心の闇、それもだいぶ深い闇を見せられてしまう(10代の不安定な心を繊細な描写で浮かび上がらせる筆力ゆえ!)し、高1のとき付き合っていたという年上の元カレはどうしようもないクズだし、その元カレがどんどんヤバくなっていくし(注2)。

好き嫌いが分かれそうな作品。ただしいったん物語に入っていけたら、ラスト3章は感涙必至(夜1人で読むことをお勧めします)。ネタバレはしないがちゃんと救いのある物語だし(それは大事なところはちゃんと伏せつつも、プロローグで示されている)。いやこれ泣いてまうやろ。

物語全体に通底するのは藤子先生の人に対する優しさと、ドラえもんの哲学。


物語の鍵となる人物、理帆子と同じ高校に通う1つ上の先輩別所と、男女のストーカーの気質の違いついて話している場面が、なぜか私の中ではのび太と出木杉君の会話と重なった(話題は全然違うのにね)。
たぶん本質的なところを主人公(のび太=理帆子)が質問、重要な相手役(出木杉=別所)に長台詞で語らせる、という手法の部分。

この場面、別所は理帆子に向かってこう言う。

「人の脈絡のなさを舐めてはいけない」

この台詞が、物語終盤への重要な伏線になっている。




紙幅が尽きたので「授業の時間」はまた今度(安定の1500字)。



注1:今から10年以上前、深夜アニメで『ゴルゴ13』をやっていて、EDに使われていた曲らしい(知らずに聞いていた)。関西ではテレビ大阪ということで、滋賀県民としては知る由もない。


注2:『かがみの孤城』はそうでもなかったけれど、物語の主人公の年齢の割に、想定読者は大人ですね。過度に残酷、暴力的、または性的な描写があるわけではないですが、とくに理帆子の心情描写について、小学生にはたぶん無理だし、中学生でも高学年くらいでないと難しい気がします(個人の感想です)。

太宰治を読んでみようとしたがあまりの暗さに途中で止めたとか、樋口一葉を読んだけど何言ってるのかさっぱりわからないとか、それくらいのレベルで読む人を選ぶような気がしました。

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