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dai さんの日記
2022
7月
14
(木)
20:06
本文
私は読書家だと思われているかもしれないが、たぶんさほどではない。月に文庫本を数冊買う程度だし、その文庫本すら、いささか積読気味だ。
ミステリファンを自称するにも、読んでいない本が多すぎる。人にお勧めを聞かれても、返答に困ることが多い。まあ、お勧めを聞かれたところで、相手を見て本を選ぶ必要があるということもよく知っているのであるが。
そんな私が、人から「このミステリはすごい」と勧められた1冊。図書館で見つけて、その場で閲覧席に持っていき2時間ほどで一気に読んでしまった1冊である。確かにすごかった。
なお、図書館本ということもあり、本棚には置けないのであしからず。
『絶望ノート』 歌野昌午 幻冬舎
(出版社の書籍詳細ページより引用)
[中学2年の照音は、いじめられる苦しみを「絶望ノート」と名付けた日記帳に書き連ねた。彼はある日、頭部大の石を見つけ、それを「神」とし、自らの血を捧げ、いじめグループの中心人物・是永の死を祈る。結果、是永は死んだ。しかし、収まらないいじめに対し、次々と級友の殺人を依頼する。生徒の死に対して、警察は取り調べを始めるが…]
デスノートみたいなのを想像すると、完全に裏切られる。超科学的な現象とかではなくて、いたって現実的な物語、つまり犯人は神様ではない。ネタばれするわけにはいかないので、これ以上何も言わないが、とにかく想像の斜め上をゆく結末だった。
母親がこの「絶望ノート」を照音の机の引き出しから見つけて、息子が受けているいじめの酷さに狼狽するシーンがある。「普通の日記だったら中を見ることはなかっただろう。でも表紙が表紙なので、中を見ずにはいられなかった」旨書かれているが、普通の母親なら普通そうなるだろう。その母親の行動も物語を思わぬ方向に動かしてゆく。
蛇足であるが、作者の歌野昌午氏、初めて読んだのが「舞田ひとみ」シリーズ(注1)で、作品の印象から勝手に自分と同じ世代の作家さんだと思っていた。えらく年上でびっくりした。
授業の時間だ。
テスト明けに1Zで小説の読み方の授業をしたが、読めてないね。読解力が全然ない(←ひどい、自分のことを思い切り棚に上げてる)。
「母と一きれずつ切って食べたきりだったはずのチーズが、もうほとんどないのだ。」って本文に書いてあるやん。
生徒たちが初見で解いた解答をみると、「盗み食いが父にわかってしまったのは、三人の子供たちがどんな思い込みをしていたからか」の問いに対し、上の記述がまったく踏まえられていなかった。父はチーズを最初に一きれ食べて以降、まったく食べていないのだ。
その授業で、「叙述トリック」の話をしたが、そもそも「叙述トリック」とは書かれていない事実を読者が勝手に想像で補うことによって成り立つミステリの手法である。したがって書いてあることすら読みとばしているようではこの手のミステリは読んでも理解できないぞ。あれは最後に騙されていた(ミスリードさせられていた)ことに気づいて、「あー、やられた」感を楽しむものである。
まあ入試国語でミステリが出ることはない(注2)だろうけどね。
では今日はこのへんで。
注1:初読は「名探偵は反抗期」(2021年5月角川文庫)。中学2年の舞田ひとみが身の回りで起きた謎を解決する人の死なない(死なないとは言っていない)ミステリである。蔵書は現在栗東校にある。
注2:いや、そんなことはない。米澤穂信が入試問題に出ていた(しかも、ミステリのけっこう核心部分)例を知っている。
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