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dai さんの日記

 
2020
6月 5
(金)
15:14
トップの本棚―解釈と定義の自由
本文
いつの間にやら金星がどんどん追いついてきて、あっという間に追い抜いて行った。日没後に見えていた宵の明星は今週初めでお別れである。(注1)

麦秋を実感するとすぐに蛍の季節である。引きこもっている間に、ずいぶん時間が過ぎていっているのだ。


『読書嫌いのための図書室案内』 青谷 真未  ハヤカワ文庫    


一番楽そうだからという理由で図書委員になった「僕」と、活字中毒でおとなしすぎるがゆえにクラスから浮いている藤生さんが織りなす、本をめぐる謎解きの物語。二人は図書新聞を作ることになってしまい校内のいろいろな人に読書感想文を頼んで回る。その過程で、読書嫌いの「僕」が本の世界に引きこもってしまった藤生さんの背中を押す物語と読みたい。

作中、藤生さんの『舞姫』(森鴎外)、『少年の日の思い出』(注2)(ヘルマン・ヘッセ)に対する解釈が面白い。日本からの留学生豊太郎がドイツ人ダンサーのエリスを振ったのは「友人」が敷いてしまったレールから外れられなかった、つまり自分で決められなかった帰結であるだとか、エーミールが「僕」の謝罪を子どもらしくない振る舞いで拒否したのは、親が教師のエーミールがそんな風に育てられたからだとか。


さて授業の時間だ。


学習コース小5国語は難解な説明文(幾何を文章で説明するのは本当に難しい)を超えて再び物語文へ。新版ではテキストの構成がガラッと変わっていて、このタイミングで豊島ミホからの耶月美智子(注3)。「登場人物の心情を読み取る」ことが目標の単元でこのチョイスをとは新鮮だし、個人的にはうれしい。

豊島ミホのほうは小4か小5ぐらいの姉が主人公。妹が病弱なため夏休みにどこにも出かけられないお話。耶月美智子は『しずかな日々』の一幕から、小5の少年が母親から転校を告げられる場面である。いずれも生徒と同年代の登場人物の心情だから、取り立てて難しいことはないだろう。

もうちょっと学年が上がって、だんだん身近でない他人の心情を慮れるようになっていったらいいのだ。中1国語に『少年の日の思い出』があるのは、おっさんが少年時代の回想を語り出す、というプロローグになっているところがポイントで、その辺の心情に触れられるかどうかに値打ちがあると思う。



注1:2020年6月4日ごろに「内合」。太陽、金星、地球が一直線に並ぶ。
注2:国語1(光村図書)p178〜p191参照。
注3:いずれの作家も今年に入ってから当ブログで触れている。
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