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dai さんの日記

 
2022
6月 30
(木)
13:00
トップの本棚―さくらからのサクラ
本文



 中1国語教科書に出てくる最初の小説が、瀬尾まいこ『花曇りの向こう』から西加奈子『シンシュン』へバトンタッチしていた。タイトルと作者名だけ見たときに、おお、令和の学校教科書はずいぶん攻めるなあ、と感心していたのだ。

 長らく中学生の国語なんか見ていなかったこともあり、新鮮な驚きをもって、定期テスト対策の準備の一環として『シンシュン』を読んだ。
 『シンシュン』では、西加奈子は本気を出していない、と言ったら語弊があるだろうが、マイルドすぎて無味無臭に近い。まあ、こないだまで小学生だった子に読ませる文章だしな。そりゃ、そうか(何を期待していたのだ?)。


『さくら』 西加奈子 小学館文庫
『サクラ咲く』 辻村深月 光文社文庫



 ヒーローだった兄ちゃんは、二十歳四ヵ月で死んだ。父ちゃんは家出した。「僕」は実家を離れ、東京の大学に入った。残された家には、酒におぼれた母ちゃんと、引きこもってしまった妹、それに僕が子どものころにもらわれてきた十二歳になる老犬の「サクラ」だけ。
 物語は、チラシの裏に書かれた、父ちゃんからの手紙を握りしめて実家に帰る「僕」の、帰省ラッシュで混雑する新幹線の車内の描写から、いや、正確には、その手紙が書かれたチラシの描写から始まっている。
 そのチラシの色使い、まるで面倒臭い一切の感情を振り払うかのように爆走する新幹線、こんなふうに視覚や聴覚に直接語りかける情景描写が至る所にちりばめられているところが、西加奈子の真骨頂なのである。

 物語は奔放なようで感情を内にこもらせる妹のある行動が、絶望的な出来事を引き起こす。
 いけない、勢い余ってネタバレしそうになった。妹が生まれた日から兄ちゃんが死んでしまうまでを、「僕」が回顧する、という形で物語は進む。

 文庫の帯は映画の宣伝である。長男が吉沢亮、次男が北村匠海、妹が小松菜奈。2020年11月公開で、兄二人は高校生、妹は中学生という設定だから、キャストに無理があるという意見もあろう。けれどもあんな(エロい)シーンや、こんな(切ない)シーンもあるから、プロフェッショナルな演技力を持った俳優さんでないととても務まらないだろうな。

 なお、中学生や高校生がデートで見に行ったらめちゃくちゃ気まずかったという意見を目にしたが、そりゃそうだろう、という感想しかない。地上波でやるとして(やんないだろうけど)、親と一緒に見ていたらもっと気まずいだろうな、知らんけど。
 あと、長男が死んじゃうことも予告編でばらしてしまっていることに文句を言っていた意見もたくさん目にしたが、原作の文庫の帯にそのことが1行目に書かれちゃっているので、文句は版元に言ってくれ、という感じだ。

 さて、内容が内容なので、さすがに中1の教科書ではおススメしにくいだろう(学校道徳的に)。
 以前の教科書は「広がる読書」に『あと少し もう少し』(瀬尾まいこ)が挙げられていたが、今の教科書では『サクラ咲く』(辻村深月)と『都会(まち)のトム&ソーヤ』(はやみねかおる)だ。


 好きな作品で、以前から本棚に置いていた『サクラ咲く』を改めて紹介しておこう。

 中学、高校が舞台の短編3つ。

 「約束の場所、約束の時間」では謎の転校生菊池悠君がやってくる。彼が裏山に隠していたのはエロ本、ではなくてまだ発売されていないはずのゲームの攻略本。彼は果たして未来からやってきたのか。

 表題作「サクラ咲く」では、中学校に入学したばかりの引っ込み思案な女子、塚原マチが、図書館で見つけた本に挟まれた手紙を見つけ、見知らぬ同級生との心の交流が始まる1年間の成長物語。手紙の主はマチと同じ1年5組の誰かなのだが。

 「世界で一番美しい宝石」は、映画同好会(人数が足りなくて「部」になれない)の1年生男子3人が取りたい映画の原作となる絵本を探し出し、それをもとに憧れの3年女子の先輩に映画のヒロインになってもらおうと奮闘する。


 おお、欲張って2冊挙げたら紙幅がなくなった。今日(6月30日)の授業はお休みである。

 次回は「ダイコンは大きな根」の稲垣栄洋が新潮文庫から出した新刊エッセイを取り上げよう。

 では、今日はこの辺で。






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